夫四國八十八箇所盤
當初大師も巡拝まし
ましと云傳ふ実尓巡
禮の功徳莫大也志かあれ
とも海陸程遍だちた連バ
志をむなしくする輩
多し故尓御室御所
伽藍参拝の便ながら
遥拝を遂しめ給ハんとて
御山の内成就山能麓5
一里半余の王たり尓是
を写してそ連/\本尊を
安置せら連たりしに星
霜推移り堂宇破壊尓
およびてほとんど絶たる尓
等しかりかるを継興し給ひ
我滅後に信あらんもの
ハ我名号を聞て恩徳
を思念せよ云〃とのたまへり
も登より信心尓志たがひて
佛菩薩の立どころ尓現し
たまふことハいふ尓およバず
いはんや四国三百里耳
なん/\たる路程を遍
ずして間ちかく拝し
たてまつることいくばくの
好因縁ぞや
文政十丁亥夏
久冨遠江守源文連謹誌
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夫四國八十八箇所ハ
當初弘法大師定め
給ひし霊場尓て
巡礼の功徳莫大なり
志かは阿れども海陸
四百里尓なん/\たる
路程なれバ志を空
しくする輩多し
是故尓御室御所
伽藍参拝の便なら
遥拝せしめ給ハんとて此
成就山の麓より一里餘の
わたり尓これを摸して各
本尊を安置せられたりし尓
星霜推移里堂宇破壊尓
及ひ本とんど絶たる尓等しかりつるを
我滅後尓信あらんものハ我名を聞て
恩徳を思念せよと云〃とのたまへ里
満た此四方のめぐり尓金胎諸尊の
種字一字一石にして建たれバ此内は
即ち両部の曼荼羅なり大師の
御文尓一礼一瞻恵剱断縛とて一たひ
曼荼羅を禮拝すれば御佛の智
惠のつるぎ尓て罪悪尓志はられたる
縄をきり断たまふとなりいか尓况んや
此界尓入連ハ其身そのまヽ曼荼羅
會中の人なるをやかれといひ古連登
いひ一かたならぬ因をもて諸願成就
即身成佛の好果を得せしめ
給んとの御事なれ盤そが故
よしを古ヽ尓志るし侍るなり
天保三年壬辰歳
久冨遠江守源文連謹識
樋口與兵衛刀
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