御室本山・仁和寺参詣の記念品(刷り物)のこと
善通寺紀要 第19号より



 その1

 【御室八十八ヶ所霊場絵図の刷り物について】


 小生所蔵の一枚刷り二点であるが、表裏両面に、本四国霊場絵図及び本尊の御詠歌を書き連ねたものAと御室成就山にある八十八ヶ所霊場の絵図と御詠歌B(文政十年久冨遠江守の霊場復興及び遥拝の勧奨文あり)とである。このうちAの片面の絵図については善通寺教学振興会・紀要、第12号(平成18年)に大要について発表済み。
 今回は此刷り物と類似の一点C、あわせて三点の刷り物について考えて見るものである。

 小生所蔵Aには寛政二年の発行趣意がある。次に同じく小生所蔵Bのもの、こちらは御室成就山八十八ヶ所の絵図と御詠歌の両面刷りであるが、成就山八十八ヶ所巡拝勧奨文は文政十年(一八二七)久冨遠江守源文連のもの。そしてもう一点Cは「御室山内 四國順拝所細見圖 全」とあり、片面の絵図のみのものである。こちらはBの勧奨文を少し改めて、天保三年(一八三二)久冨遠江守源文連謹識とある。

 A 寛政二年一七九〇
御詠歌四国札所絵図
 B 文政十年一八二七
御詠歌御室札所図
 C 天保三年一八三二
(御詠歌無し)御室山内四國順拝所細見圖

 概略右様之次第。A・Bの御詠歌は四国本札所の詠歌であるが後で比較して見るように同一の内容であるが、表記文字の使用に違いがみられる。B・Cの図は同じく御室成就山八十八ヶ所を配置したものである。しかしCでは各札所寺院名は省略されている。しかし近在の著名な地名が添えてあり、多分に観光的案内も加味されたものとなっている。なおこのCは賣弘所として「一條大宮西 石田治兵衛」を名乗っている。樋口にいた與兵衛の刀(彫刻)であるが、A・Bとは異なった味わいの表現となっている。A・Bは発行元等不明。
 以上三点各一枚の刷り物は四国霊場・御室山内八十八ヶ所霊場に関してのもので、勧奨文に言う如く「御室御所伽藍参拝の便」に「遥拝せしめ給はん」意図で発行販売されたものである。つまり御室仁和寺参拝の人々にとっては京都本山仁和寺の巡拝記念の土産となったものと推測される。
 これまでの所、Aは小生所蔵のもの一点。Bについては、ほかにも何点か所在が知られている。Cについては、小豆島赤松家所蔵のコピー、香川県立文書館蔵のみ。
 内容的には御室成就山の八十八ヶ所(B・C)の絵図であり御室仁和寺参詣の記念土産とみて先ず間違いはないであろう。さらにAに捺してある大きな朱印が気になる。刻字は「御室御所・・」とある。


御室御所・・印

 Aには本札所四国辺路に行けなくてもこの絵図を見て日々に光明真言をとなえて札所道のりなどを暗記すれば大きな功徳であると述べている。
 BとCの絵図にある文は次の如し。



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