四国辺路界での出版事情
善通寺紀要 第17号より



 三、四十八番西林寺森下・表具師版(縦冊)

 タテ17cm、ヨコ12p。題簽「新板大字 四国遍ん路道志るべ」。見開きには「四國禮」の文字と大師座像。その下には三人連れの遍路人姿。やはり真念本の冒頭部分を簡略につづめて納めてある。「用意の事」から始まり、。二頁目は、

 紙札打やうの事
其所の本尊大師太神宮ちんじゆ惣じて
日本大小のじんぎてんし志やうぐんこく志ゆ
しゆくんふも志ちやうろくしんけんぞく
ないしほうかいべうどふりやくと打べし男女
ともにこふめう志んごん大師のほふごふ
ゑかうし十三佛御志んごんとなふべし
 文化十四年丑晩春
豫州松山高井四十八番西林寺森下
此 書 出 所表 具 師 版 印 」

 先の虎屋版に比べると、少し体裁や刻字が丁寧で本格的な書冊と成っている。年代「文化十四年」(一八一七)と発行者「表具師」とある。所は札所四十八番西林寺の近く、重信川の南であるが、松山の町にも近いところである。
 お勤めの経文は無くて、ただちに「四國遍路道志るべ 阿州 むや舟付なる戸ヨリ 一ばん迄三り」あって、札所案内に入っている。

 本尊姿図 札所名 御詠歌と地名距離

 一ます三行分でしかないが地名が加わって情報としては先の虎屋 本より詳しい。又札所名と距離のところは陰刻にして印刷すれば黒い帯状となって紙面にアクセントをつけて美麗と言うか少しハリがある。


表具師版


文化十四年

 札所番号と本尊名は姿図の横に示している。また国ごとにごくあらましの道しるべ(村名続き)を付けている。それ以外にも長丁場の地域にも地域情報として村名・番所・坂道や摂待のことなどにも触れている。
 また六十四番は「まへかミじ」と「さと」が除けてある。そして番外として「金毘羅山」と「白鳥」の二ヶ所が特別に掲載してあるのが特徴といえる。このパターンは幕末期から明治にかけて多く輩出しているものなのである。*たとえば…



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