南天龍宮城(14)


【龍と人と】

 先に述べたごとく、「あなたが二人目だ」と佐々井師が小生に語りかけたのは、龍と人との関係について述べているのが、民俗学の吉野裕子女史に次いで小生だ、ということである。あまり微細なところまで語ることは出来なかったものの、国宝平家納経ゆかりの紋様彫刻を見て佐々井師の真意は窺うことが出来たのである。
 とにかく日本的意匠=五輪塔双竜模様がインド中央部=南天マンセルに創建された御寺に鎮座したということには、竜種族のみならぬ神秘の計かり事が籠められている。と、かくのたまうのは四国辺地に住まいする拙僧のみの寝言なのであろうか?

 拙稿

「龍神恋慕」七に曰く、「此の点から私は龍の始原形態は祖神の鬼であり、前者(龍)は後者(鬼)の転格せるものではないかと考へる…『龍神考』池田末利
この論者は、心霊学にいうーすなわち前回記した小桜姫物語に出てくるー龍神のことなど頭には無く、唯、古代中国における祖神の動物転格の一例としての龍神を論じているのである。それも、龍の字音を語源的に追求した、極めて学述的な結論である。わずか四頁足らずの本文に二頁半の註のついた小論であり、専門家や当の本人がどう評価しているのかはともかくも、龍は祖神の鬼=人間の祖霊である、という結論に注目したい。
・・・
〔龍は人の祖霊である〕、ということは、前回引用する処の浅野説。
〔人間は龍神の子孫〕、と一致するのである。
因みに浅野氏は英語の教師で明治大正の人。龍神考の論者は昭和の中国哲学の先生である。 …以下略

 この時のカットを入れておこう。


同行新聞より



丁寧な触地礼



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