南天龍宮城(13)


【五輪塔と双竜】

 国宝平家納経々箱の紋様は、仏教美術の意匠として見事なものであるが、単に美術史上の面白さ、また華麗さゆえに秀嶺師は添刻したのであろうか。御召喚御啓示の菩薩大像に添えたということは、仏教の真髄としての五輪塔婆であり、人間の存在に深く由縁ある竜種族の本拠地であるからである。
 五輪塔婆を人体に対応させた図が『五輪九字明秘密釈』にある。何と云っても深秘なのは人と龍の関係である。祖孫なのである。他愛もない途方な話に聞えるかも知れないが、龍は人の祖先であり、人は龍の子孫なのである。現代の科学的知識では荒唐無稽な結論と思われるかも知れないのだが、どうやらそのような事なのである。
 小生は二十一世紀の日本に息しているわけであるが、随分と昔にはインド南天辺りに居られた龍神が強く関係つまりは守護しておられるらしい。二十歳前後に聞いた話である。八大竜王の八番目ウパラ竜王の筋らしいのである。マンセルと云うか法華経提婆品に登場するのは三番目のシャカラ竜王の一団であり、文殊師利菩薩が担当されていた。神霊界のことは余りにも奇奇怪怪ゆえに、昔の賢聖はこれを語ることを得ずという。



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