駄家通信 4



牛は間違いなく一両日の内に当方より追せ戻し申すべく候間、何分此処を聞き訳、是非一両日預け呉れられ候様申し答え候に付き、早速に取り帰り申すべき訳にも候得ども、強いて相頼み候故、其の侭にて罷り帰り一両日相待ち候得ども、何の沙汰も申し越さず候に付き、またまた右両人罷り出で候処、その節も今少し延引致し呉れ候様、両三度も参り候処、前同断申し前にて相決まり申さず候に付き、村役人場え右の段申し出で、私どもよくよく相糺し候処、両人申し出で候通り、是までの手都合に少しも相違御座無く候に付き、私どもより今治御領朝倉上村役人場え懸け合い候処、先方申し前、当村権七是までいたし方甚だ不埒の致し方に候間、牛は遠からざる内差し戻させ候間御村方牛主のものどもえ少しの間延引いたし呉れられ候様口上をもって申し答え候に付き、日を待ち候得ども何の沙汰も御座無く、またまた前段の通り村役人場よりも日延べの義と□奉り候□、再応懸け合い申し遣わせ候処、この度の返答には、牛も代札も差し戻し候ことは出来難き様子申し越し、甚だ以って不審の致し方と存じ候。
その上彼是と我が侭而已(のみ)申し越し、日を延ばし候様仕向け候得ども、最早田地植えつけ拵えなどに相懸り候時合御座候て実に以って当惑仕候間、何卒(なにとぞ)御上様御苦労に相成らざる様訳立て候はばと存じ、色々の仕つり候得ども、前段申し上げ候通り訳立て申さず候間止むことを得ず恐れ多く□奉り候得ども、御憐愍の上御掛け合い成し下され、牛早々相帰り候様相成り候はば広大の御慈悲有難き仕合せ存じ奉り候、以上。

御預かり所桑村郡河原津村
 庄屋 虎之助
 午 四月 年寄 甚八
 同  忠左衛門
百姓代 平右衛門



 この願書の結果は不明。現代風に考えるならば耕運機と軽四トラックが故障して使えないような事態で、田地の植えつけに困った事である。

 以上東予郷土館所蔵文書にみられた「駄家」と言う言葉のある一件でした。


※〔追補記〕その後十二月九日東予での古文書講座の合間、この「駄家」の噂になった所、先述別の人と言うのは新居浜中萩辺の人であり、また先月欠席していた西条のK氏も駄家の言葉を使っていたとのことでした。馬屋と言うより牛舎(牛小屋)のことだそうです。




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