駄家通信 3



〇恐れ乍ら書附を以て願い上げ奉り候
私ども村方百姓常次・清兵衛と申すもの、組合牛につかまつり候て、御預かり所越智郡下村仲右衛門かたより去る巳九月廿八日代札三百三拾目の直段にて同十月廿八日限り右代札相済まし約束にて牛買い求め期日通り滞りなく銀子相渡し候上は、この牛に付き何方よりも少の掛合に相成り候儀は御座無く候筈の処、当正月八日の朝「駄家」を見請け候処、牛おり申さず、牛繋ぎに「朝倉上村権七取り帰える」と張り札これあり候に付き、否今治御領朝倉上村権七方え常次・清兵衛両人罷り越し、「何故手前の牛を取り帰り候哉?」と対談つかまつり候処、権七申し前は、この牛に掛り合いは御座無く候えども、下地下村の仲右衛門と申すものに銀子ワリ合これあり候につき、元々牛より起り候ことゆえ牛預かり帰り候より外に致し方これなく、それゆえ取り帰り候由。
両人のもの申し答え候は、「何連(いずれ)も甚だ以って不埒千万、下地そなたと下村仲右衛門と引合い、当方には存じ候訳これなく、この牛の儀は下村仲右衛門より買取、代銀も日限通り滞りなく相済まし候ことゆえ、その牛を取り帰り候は如何(いか)なる存意にこれあり候哉」。
牛は只今取り帰り申すべき段申し詰め候処、権七も、「なるほど、これは貴様方申され候通に相違これなく、一言の申し訳も出来申さざる事には御座候えども、今日取り帰り候処を一両日差し延ばし呉れられ候様…

 と、ここまでで先十一月の講座は終了。また来十二月に続きをする予定。
 さて原文を少し読みやすく活字化して見たが、ドンナモノであろう。こんな駄文を書いていて一体全体どのような人生軌道を描くことになるのであろうか?ナドトぼやいて居る内はまだ良い。
 活字化に際しては少し読みやすく仮名を増やしている。言葉としては駄家のほかに「代札」も初めて出てきたように思う。「下地」とか「銀子ワリ合」等も少し理解しにくい。「貴様」も本来の意味合いであり、現代のように侮辱した呼び捨てではない。来月の講座の予習ではないが、次も読んでおこう。




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