徳右衛門丁石の話

 その13-4


 前回(千人宿に残された、納め札は語る その九)述べました白藤大師堂の地蔵尊台石の銘文中「六十六部日本廻国」という言葉がありました。これは覚心さんが、自身の事を称していわれたものです。

○六十六部
廻国巡礼の一.書写した法華経を全国
六六カ所の霊場に一部づつ納める目的
で、諸国の社寺を遍歴する行脚僧。(広辞苑)


 回国といえば、国々を巡って修行することですが、この回国行者の一つとして六十六部(六部)という方法をとった修行者達がたくさんいました。他にも、千社参りとか、高山参拝とかの方法がありました。

 木喰行道のように、各地で仏像を彫ってゆく方法もありました。また貞伝という僧のように千体もの小像を神社仏閣へ奉納してゆかれた方もあります。

 木喰や円空さんは木彫の行者でしたが、石刻にたずさわった行者も可成りいたようです。小生在住の庵にもこうした行者が立寄って六地蔵を刻んで立去っています。

 その名は、春成房。文化四年に当地にきて、村の人に石を準備してもらい地蔵尊像を刻んでいます。この六体の像に刻まれた文字があります。


奉納 文化四卯今月。

大乗。 妙典。 日本。

回国 五穀成就。 天下泰平 国土安全。


 そして台石には、「諸願成就 行者春成房」とあります。この行者春成房のごとく石彫の造像という方法で回国した僧もいたということは、興味ある事実です。




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