四国辺地の草堂・真念庵
〜昭和63年(1988年)・6月14日号より〜


 二、遍礼屋

 近世遍路の特徴は、俗家(庶民)の増加にある。そしてこれら俗家の遍路を支えてきたもの<遍礼屋(へんろや)>の存在がある。 遍礼屋は「遍路屋」「遍路家」とも書かれるが、要するに遍路の為の宿泊施設である。大概は無料であった。歴史的な起源は明確でないが、古代の布施屋とか中世の旦過庵・接待家に連なるものとされている。

 しかし。四国路における多数の遍路家の存在は、沿道住人による善根宿と共に、特異なものとされる。弘法大師への信仰を中心とする四国編路現象を支えてきた重要な存在である。

 そうした近世の遍路屋の代表的なものとして真念庵がある。三百年以上も前から現在地、高知県土佐清水市市野瀬(三十八番札所足摺山金剛福寺の手前七里)で、道行く遍路たちを温かく見守ってきた小庵である。

 まさに四国辺地の草堂と呼ぶにふさわしい小庵であるが、ここには弘法大師信仰の遺物がたくさん残されている。



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