南天龍宮城(17)−2


【瑜祇塔】




これは複雑な造形であるが、『金剛峰楼閣一切瑜伽瑜祇経』という密教経典を根拠としている。金剛峰楼閣瑜祇塔ともいい、また涌亀塔とも称される。
 高野山で古くから造立され、新しくは昭和六年に再建されているし、河内高貴寺にもこの模型小塔がある。真言密教の思想に基ずく世界観を表現したものであるが、これを石造にしたのがこの塔である。
 丸味をおびた安山岩の台石を別にして、その上の方形基礎部から頂上まで約三メートル五〇センチ。
 基礎部正面に瑜祇塔とあり、側面に碑文も刻んである。この上に波紋で大海を表現した方形の石があり、右向きの亀が乗っている。亀(金亀という)の背には日月の円相を配した岩(須弥山)が縦長にある。それから上部には五峰八柱(五仏八菩薩を象徴)をかたどって五本の相輪(一部欠損)や円柱胴体部がある。 〔喜代吉〕
〜『続日本石仏図典』平成七年、国書刊行会〜



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