駄家通信 25



H25.2.26
〜蘇芳追記・かりやす〜

 〈蘇芳〉すおう、に関して珍しい話。
 前述の如く絵具としての蘇芳泡(花)はわが国独特の製法という事であったが、最近読んだものにこの蘇芳(すほう)のことが出ていたので驚いた。藩札の紙に使用したらしいのである。

名塩紙を使った藩札の特徴として「『名塩史』(平成二年十一月刊行)に記載された古老の聞き取りでは、原料は雁皮を主として楮を加え、精選した泥の微粒子を入れたらしい。(略) 色付は、名塩紙に漉き込む泥の色に加え、植物染料を用いた。白には「東久保土」(とくぼつち)、黄には尼子土(あまこつち)を漉きいれた。浅葱色は藍、茶はヤマモモ、赤色系統には蘇芳(すほう)が用いられた。(略) 「藩札の大きさは、他藩のものと区別をつけるためにいろいろのものがあった。」

2008 増補『西条藩手漉き和紙の歴史と文化』加藤正典

 西宮の名塩の紙についての説明を引用した中に見つけたのである。極めて特殊事情のことになるが、藩札用の紙漉きに使われたよし。それも名塩といえば高速道路のPAにあった地名ではないか。四、五年前に読んだ時には素通りしてしまったものを、今回西条藩札がらみで天満屋弥一右衛門のことで再読していてこの「蘇芳」記事に気付いたのである。
 また別の話になるが、同じく所蔵の反古で植物染料「かりやす」というものを知ったことがあるが、これも相近目にした新聞記事中にみつけたのである。
 ※讀賣新聞2013年2月21日(木)「時代の証言ー染めと織り」志村ふくみ10、の記事中、

ススキに似た穂の刈安(かりやす)は明るい黄色・・・

とあった。化学染料に比べて植物染料が如何に素晴らしいかの話である。


 この文書は右側から、「苅安」「桃皮」「白明はん」「寿(す)ふ木」とある。いずれも染めに関連した品物である。「すふ木」は「蘇芳木」のことではなかろうか。「明はん」は明礬、染め物の必需品である。この文書は大坂問屋での仕入れの注文をしたもので、右肩にある「阿王伊」は問屋「阿波屋伊兵衛」のこと、大坂北堀江にいた。



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