駄家通信 24



H25.2.3
一 【蘇芳あ王】壱升
 此品先達(て)御送り惣キ候故
 与路しき所御改御こし
可被下候

一 【ずみ】壱升

一 【上々吉浮墨】五百目


 これは国本屋政蔵が平地屋(岩平)に上方での仕入れを依頼したものである。前段「婦乃り」や「九寸はけ・丸はけ」に続いて上記三点がある。【蘇芳あ王】スオウアワは顔料というか染料である。絵具。
 「蘇芳」は花の名前。以前は庭にあったが、今は見かけない。紫色の花粒だったように思う。なお文字の「蘇芳」は木ヘンの「枋」である。少し長くなるが広辞苑の説明を引用しようと思う。(一部省略)

@マメ科の小灌木。インド・マレー原産。枝に小さい刺がある。葉は羽状複葉。黄 色五弁花は円錐花序をなす。木質・楕円形の莢(キョウ、さや)を結び、中に三、四個の種子を含む。心材の削屑及び莢は煎じて、上代から重要な赤色染料とされた。

 次に

A蘇芳の心材の煎汁染めた黒みを帯びた紅色。主要色素はブラジレインで、明礬媒染で赤色、灰汁で赤紫、鉄媒染では紫色に染めることができる。

B襲(かさね)の色目。表は薄茶色、裏は濃赤色。蘇芳襲。

 襲(かさね)のことも興味あるが、ここではさらに「あ王」=アワの話。実はこれは「花」なのである。「蘇芳花(すおうばな)」の説明項目があったのに驚き、さらにその説明にも関心させられたのである。アワは花なのである。海が荒れると浪の塩吹雪が飛んでいることを思い出せばよい。泡は花なのである。

【蘇芳花】
絵具の一種。蘇芳の煎汁から製した帯紅暗褐色の泥状物。水に溶かせば帯紫紅色を呈し、濃い液を紙面に塗布すれば表面金色の暗紅色を呈する。この製法はわが国独特という。蘇芳泡。

 下線部「わが国独特という」に関心させられたのである。中国三千年にもなかった智慧が予想されるからである。今回下張りの反古文書からこうした日本の心を知らしめられたのである。大袈裟であろうか?

 もう一点、【ずみ】であるが、これの広辞苑の項目も面白い。冬の夜長に足の冷たさもそっちのけに目を通す事が出来るのである。スミ・墨では無い。  

ずみ【桷・棠梨】
バラ科の落葉小喬木。リンゴと同属の植物で、山地に自生し、荒地や湿地のふちにしばしば群落をなす。高さ10メートルに達する。全体に棘がある。春の末、白色で赤いぼかしのある花を開く。果実は黄または紅熟。材は緻密で堅く、家具・細工物などにする。樹皮は煮出して黄色の染料とし、またこれに明礬(みょうばん)などを加えて黄色絵具を製する。ヒメカイドウ。コリンゴ。


 日本画家達にとっては常識なのかもしれないが、日本独特の色を使った実物の絵を目にする日を楽しみにしているところである。何か有名な絵があると思われる。



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