はじめに これまで辺路本については、道案内書として真念『四国邊路道指南』貞享四年(一六八七)刊が知られている。該本は江戸時代は勿論、明治・大正・昭和へと増補大成本などの類書に至るまでロングセラーなものの原本というべきものであった。 真念本『四国邊路道指南』には後続の『増補大成本』がはやくから出版されている。まず以て刊行年代は不明であるが明和四年(一七六七)本より古く、元禄年間のものと推測されるもの二点。香川県小豆島の藤井家蔵本と愛媛県歴史文化博物館蔵本がある。 以下明和四年(一六八九)版・文化四年版(一八〇七)・同十二年版(一八一五)・天保七年版(一八三六)などがあり、さらには多少は時代に即して改正した『四國霊場編禮順路指南増補大成』石崎忠八、明治三十五年(一九〇二)本(施本、於宇和島)といったものまで続刊されている。これらの事情については『四国辺路研究』第二十七号〜へんろ本特集号〜拙稿(題目は左の如し)を参照されたし。
真念『四國邊路道指南』に続くいわゆる『増補大成』本の様子について言及したものである。今回次に問題としているのは、Wの『道中記』本に関わる在地(伊予国内)出版の書(左の二点)についてである。 @ 『四國禮場道中記』颪部村、虎屋喜代介板 年代不明(島田秀峰蔵) A 『新板大字 四国遍ん路道志るべ』四十八番西林寺森下、表具師版 文化十四年(筆者蔵) |