御室本山・仁和寺参詣の記念品(刷り物)のこと
善通寺紀要 第19号より



 その2


 BとCの絵図にある文は次の如し。


【勧奨文】

B 筆者所蔵

C 赤松家所蔵のコピー
夫四國八十八箇所盤
當初大師も巡拝まし
ましと云傳ふ実尓巡
禮の功徳莫大也志かあれ
とも海陸程遍だちた連バ
志をむなしくする輩
多し故尓御室御所
伽藍参拝の便ながら
遥拝を遂しめ給ハんとて
御山の内成就山能麓5
一里半余の王たり尓是
を写してそ連/\本尊を
安置せら連たりしに星
霜推移り堂宇破壊尓
およびてほとんど絶たる尓
等しかりかるを継興し給ひ
我滅後に信あらんもの
ハ我名号を聞て恩徳
を思念せよ云〃とのたまへり
も登より信心尓志たがひて
佛菩薩の立どころ尓現し
たまふことハいふ尓およバず
いはんや四国三百里耳
なん/\たる路程を遍
ずして間ちかく拝し
たてまつることいくばくの
好因縁ぞや
文政十丁亥夏

久冨遠江守源文連謹誌
夫四國八十八箇所ハ
當初弘法大師定め
給ひし霊場尓て
巡礼の功徳莫大なり
志かは阿れども海陸
四百里尓なん/\たる
路程なれバ志を空
しくする輩多し
是故尓御室御所
伽藍参拝の便なら
遥拝せしめ給ハんとて此
成就山の麓より一里餘の
わたり尓これを摸して各
本尊を安置せられたりし尓
星霜推移里堂宇破壊尓
及ひ本とんど絶たる尓等しかりつるを
我滅後尓信あらんものハ我名を聞て
恩徳を思念せよと云〃とのたまへ里
満た此四方のめぐり尓金胎諸尊の
種字一字一石にして建たれバ此内は
即ち両部の曼荼羅なり大師の
御文尓一礼一瞻恵剱断縛とて一たひ
曼荼羅を禮拝すれば御佛の智
惠のつるぎ尓て罪悪尓志はられたる
縄をきり断たまふとなりいか尓况んや
此界尓入連ハ其身そのまヽ曼荼羅
會中の人なるをやかれといひ古連登
いひ一かたならぬ因をもて諸願成就

即身成佛の好果を得せしめ
給んとの御事なれ盤そが故
よしを古ヽ尓志るし侍るなり

 天保三年壬辰歳
久冨遠江守源文連謹識

樋口與兵衛刀




賣弘所・一條大宮西 石田治兵衛



 B・C両版における勧奨文は、御室山内配置の八十八ヶ所霊場への誘導であるが、文政十年一八二七から天保三年一八三二まで五年の間に書き改め追加すべき事柄が有ったようである。それは関連した事として、Cの中程から後半部にかけて次のような事が述べてある。

満た此四方のめぐり尓金胎諸尊の
種字一字一石にして建たれバ此内は
即ち両部の曼荼羅なり


 また仁和寺裏山に散在する八十八ヶ所霊場全体を描いたものであるがBとCでは描写の筆致の違いも起こっている。しかし何よりもBは個々の札所寺院名を該当する堂姿の中に書き込んで紹介に努めている。Cでは札所寺院名は省略されている。そして周囲の地名などを新しく書き込んで、京都に不案内の他国人に対しての観光案内要素を加味したのではないかと推測されるのである。

 上段(左列)B、下段(右列)Cは絵図中の文字。


阿波州
霊山寺 極楽寺 金泉寺 星谷寺 地蔵寺
安楽寺 十楽寺 熊谷寺 法輪寺 切幡寺
藤井寺 焼山寺 大日寺 常楽寺 国分寺
観音寺 井土寺 恩山寺 立江寺 鶴林寺
大龍寺 平等寺 薬王寺
土佐州
東寺 津寺 西寺 神峰寺 大日寺
国分寺 一ノ宮 五台山 禅師峰寺 高福寺
種間寺 清瀧寺 青龍寺 五社 蹉
寺山院
伊豫州
観自在寺 稲荷 佛木寺 明石寺 大宝寺
岩屋寺 志やう・・寺 八坂寺 西林寺
浄土寺 繁多寺 石手寺 太山寺 圓明寺
延命寺 別宮 泰山寺 榮福寺 佐礼寺
國分寺 横峯寺 香苑寺 一宮 吉祥寺
前神寺 三角寺
讃岐州
雲辺寺 大興寺 □弾八幡 観音寺 本山寺
弥谷寺 曼荼羅寺 出釈迦寺 甲山寺
善通寺 金倉寺 道隆寺 道場寺 摩尼珠院
國分寺 白峯寺 根□寺 一宮寺 屋嶌寺
八栗寺 志度寺 長尾寺 大窪寺
在孝寫判判妙心寺

八十八ヶ所御山
伽藍 二天門 御所 二王門

愛宕山

御所
御室西口

福王寺村

鳴滝五智山

嵐山


赤松家文書





その1 / トップ / その3