徳右衛門丁石の話

 その5


 38番足摺山金剛福寺門前の標石。山門に向って左手前に立っている。


是より

(ア)大師像十二里

寺山迄


 施主は「土州安喜郡室津浦・宇治屋利三兵衛」、願主「豫州越智郡・徳右衛門」である。

 ここで距離が十二里となっているのは、市野瀬「真念庵」から七里打戻り、寺山へ五里ということである。真念が『道指南』で初遍路は月山へ行かず、笹山へ参れと言っているのに対応したものなのである。衆知の如く市野瀬にある真念標石には「右 てらやまみち五里・左 あしずり山みち七里」とある。


 ところで話しは横道になるが真念標石である。今回三十四基目を目にすることが出来た。讃岐の松川氏が遂に辿り着いたのである。涙ぐましいと言うほどではないにしても、快挙である。これまで何人かの物好きが試みたことであるが、未発表の確認事例は最近は殊に珍しい。詳細は『四国辺路研究』26号に発表予定である。

 とまれ、道標石は折損や粉砕の宿命にあるものの、まだまだ眠っているものが起き上がって来そうで、楽しみなことである!



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