徳右衛門丁石の話

 その1


 まずは実物を目にするのが一番であるが、写真で提示しておこう。近在の札所六十四番前神寺と六十五番三角寺とでも拝見することが出来るのであるが、旧道端でも可能である。設置の意趣が一里ごとに建立することに有ったので、ほぼ4キロメートルごとに建っているからである。道標石の特徴として《方向性》と《距離》のことが重要なことであったが、これに関して徳右衛門は距離(=道の里数)を標示することに意を注いだのである。




 カットは西条市飯岡の旧道端祖父崎池の所にたっている石である。正面刻字梵字「ア」の下に大師座像、そして「是ヨリ三角寺マデ八里」とある。「是」というのはその石の立っている場所である。そこから次の札所までの距離が八里と言うことを教えているのである。全部がこうなっているわけでは無いが、これが徳右衛門丁石の特徴である。

 なお向って右側には「施主 三文字屋」、左側には「願主 徳右衛門」とある。石材は今治島部で産出する花崗岩である。これも全てではなく地域的には他所で産出する石材を用いていることも有る。




 もう一基西条市小松町「是より横峯迄五十丁」「施主 越智郡朝倉下村」「願主 徳右衛門」とある。小松町は札所が多くて距離が短く、里数ではなくここのように丁数が標示してある。

目次 / その2